第24回さがみはら若手落語家選手権優勝者・立川寸志さんの2026年10月1日付の真打昇進が決まり、これに伴い、杜のホールはしもとでも真打昇進披露公演が開催されます。当ホールと縁深い寸志さんに、このたび特別インタビューを行いました。

寸志さんは、第24回(2024年度)さがみはら若手落語家選手権優勝者です。本選手権については、いつ頃からご存知で、どのような印象をお持ちでしたか?
2015年3月に二ツ目に昇進しました。その際に師匠談四楼から「何か一つ賞を獲りなさい」と言われていましたので、これは獲れるかどうかはともかく、チャレンジするのは義務です。その年の予選に応募するつもりでした。
ところが当時の立川流には賞レースの情報が届きにくく、どうしたらいんだろうとぼんやりしているうちに締め切りが過ぎてしまい、次の年からの参加になりました。立川流の師匠・兄さん方も優勝しているお客様投票の選手権――ということで、強く意識していました。
若手落語家選手権には5度目の挑戦で見事優勝されましたが、これまでの出場回の中で特に印象深い回はありますか?
1回目(第16回)ですね。賞レースへの参加自体が初めてだったので、予選2位から敗者復活決定、そして決勝まで、緊張しながらもわくわく楽しかったことを覚えています。
結果は第5位でしたが、悔しいというより目覚めたという感じ。「またさがみはらに来るぞ!」と心に誓って、その後に続くわけです。

本選手権では、事前に演目を公開するルールとなっています。寸志さんは数多くの持ちネタをお持ちですが、どのような基準で演目を選びますか?
短い時間でお客様との距離を縮められる演目、笑いが多くて賑やかで盛り上がる演目を…と考えました。ただ5回目の決勝は「もう最後だから笑いはともかく力で圧倒できるネタをやるしかない」と考えて『鮫講釈』にしました。



2025年度には、もみじホール城山での「しろやま寄席」の他、市内団体のもとに出向く「出前落語」にもご出演いただきました。ホールとはまた違った距離感で様々な方と触れ合われたかと思いますが、相模原のお客様の反応や印象は?
落語ファンの方だけでなく、高齢者の方や小学生まで、相模原市内で高座を聴いていただきました。全力で落語を楽しもうという前向きな気持ちが客席からビシビシ伝わってきて、毎回とても嬉しいです。各施設・各会の運営スタッフの皆さんも企画から集客、会場準備すべてに精力的に取り組んでいただき、感謝しています。
落語会以外にも、演目にまつわる歴史講座などの活動も積極的な印象です。このような活動をするきっかけや今も大切に続けている理由は?
母校の東京都立大学のスタッフの方から、オープンユニバーシティという一般の方対象の講座で落語と歴史の講義をやってみないかと言われたことが始まりです。2018年のことでした。大学で日本近世史を学んだベースと、前職で書籍・雑誌を編集していたベースがあったので、現在でも続けられています。
ある方に「寸志さんのやっていることは落語の解像度を上げることですね」とおっしゃっていただいて、それを大切にしています。落語の中でぼんやりしている部分をはっきりさせる作業だと思っています。
落語が好きなお客様のため、落語家である自分のため、そして口幅ったいですが、落語のため、ライフワークとして続けていきます。
寸志さんの真打昇進には、「1000人のお客様の認め」が条件でした。この条件は、師匠からの提示だったのでしょうか。それともご自身で課された課題だったのでしょうか。昇進のための条件を決めた際のリアルな心境は?
自身で考えた課題です。落語立川流では師匠の前で落語を演じて真打認定をもらう「昇進トライアル」がよく行われますが、それとは違うかたちを模索していました。
トライアルはたいがい1回から2回程度。お客様を巻き込んで継続的に盛り上げられるものをと考えて投票という企画を考えました。もちろん師匠にお許しをいただいて進めました。続ける中でお客様の期待が高まっていく実感があり、一つステップアップした気がします。
1000人達成するという回には師匠にも出演をお願いして、真打認定をしていただきました。その瞬間は「ホッとした、よかった!!!」「真打になれるんだ!!!」というより、「これで1000人企画が終わってしまうんだなあ」という寂しさの方が強かったです。
このたびの襲名披露公演には、師匠である立川談四楼師匠の他、三遊亭遊雀師匠、立川かしめさんがご出演されますが、寸志さんとの関係性やお三方の魅力をご紹介ください。
遊雀師匠は憧れの師匠です。遊雀師匠のような噺家になりたい、少しでも近づきたいと日々思っています。若手落語家選手権で演じた『くしゃみ講釈』は遊雀師匠に稽古していただいたものです。
かしめさんは有能きわまりない後輩です。大胆な改作が面白い、将来立川流を担う若手です。二ツ目ですが、今回は口上司会をやってもらいます。
師匠ですか?――師匠談四楼の魅力を弟子が語るなんておこがましいことですので、ご勘弁を。語り始めたら時間が足りません。そもそも素面では無理です(笑)。
今回は「口上」が行われます。真打昇進披露公演ならでは、あるいは伝統芸能ならではの儀式ですが、口上の歴史や見どころは?
真打昇進や襲名披露などの寄席での口上がいつから始まったかは私にはわかりませんが、おそらく歌舞伎の口上に影響されて始まったものと思います。“片シャギリ”という荘重な笛太鼓で幕が開きます。黒紋付に袴、緋毛氈の上に、新真打を中心に座布団無しで正座して平伏しています。
歌舞伎同様の様式美から始まりますが、そこは噺家、次第次第に崩れていって――というところが落語界の口上の魅力でしょうか。
この10月から真打に昇進される現在のご心境、今後取り組みたい演目や「落語家・立川寸志」として描く未来像は?
昇進を前に緊張しています。二ツ目まではどんな高座でも「プロセス」として見てもらえた気がします。「成長中」で許されていました。でも、真打の高座は違います。毎回毎回が「結果」。言い訳はありませんから。これは緊張しますよ。
取り組みたいのは師匠談四楼の噺でしょうか。なかでも『鼠穴』『浜野矩随』は二ツ目時代は避けて来ました。これらに正面から向き合いたいと思います。
先述の落語+歴史の講義をライフワークにしつつ〈立川流の噺〉を追究していきます。
相模原のお客様へメッセージをどうぞ。
私は相模原の皆さんに育てていただきました。若手落語家選手権5回の挑戦だけでなく、地域寄席や公民館、自治会・町内会、学校などなど、様々なところで多くのお客様に聴いていただきました。本当にお世話になりました。
ご恩返しは「よい高座」「よい落語」につきます。今後一層精進してまいります。
11/16も精一杯つとめます。どうぞお運びくださいませ。



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