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しろやま寄席/〔特別寄稿〕二ツ目ブーム!?躍進する若手たち(報知新聞社 編集局文化社会部 高柳義人氏)

2021.07.06

「しろやま寄席」や「さがみはら若手落語家選手権」で相模原を笑いに包んでくれる二ツ目落語家たち。柳亭小痴楽、神田松之丞、今年2月に真打ちとなった桂宮治をはじめとする「成金」メンバーを筆頭に、今や空前の二ツ目ブームと言われています。
なぜこれほどまでに彼らが注目されるのか――数々の落語家にインタビューをし、その本質に迫る内容に定評のある名インタビュアー、報知新聞記者・高柳義人さんによる特別寄稿をお届けします。

二ツ目ブーム!?躍進する若手たち

二ツ目が熱い―。そう言われて何年も経つが、次々と活きのいい二ツ目が登場し、勢いが増しているように感じる。

 江戸落語は、「前座」、「二ツ目」、「真打ち」と3つの階級がある。見習いを経て3~4年、ほぼ毎日寄席での前座修業を終えた二ツ目は、紋付き、羽織の着用が許されプロの落語家と認められるが、自由を手にする分、より一層責任も重くなる。寄席の出番も減り、自ら仕事場を探す必要もあり、プロデュース能力が試される。寄席でトリが取れる真打ちへの昇進前の約10年の過ごし方が落語家人生で大きな意味を持つ。芸の世界では「守破離」と言われるが、教えを守ることに加え、自分の型を探しもがく時期でもあり、力を蓄える時でもある。

 11人のユニット「成金」を結成し二ツ目でブレークした講談師・神田伯山(当時・松之丞)は「青春芸」と評した。時には大失敗をしながらも、自らの殻を破ろうと、高座で挑戦し続ける姿が共感を呼ぶのだろう。技術的にはつたなくても、心に響き、芸がグンと良くなる瞬間に立ち会える喜びもある。

 今回の「しろやま寄席」の3人は、二ツ目のコンクール「さがみはら若手落語家選手権」の優勝、準優勝者だ。二ツ目4年目の春風亭一花(春風亭一朝門下)は女性だが、男性を違和感なくきっちりと演じ、口跡も良く情景が浮かぶ。同6年目の林家つる子(林家正蔵門下)は華があり、子供のかわいらしさは師匠を彷彿させる。同9年目で真打ち昇進間近の春風亭昇也(春風亭昇太門下)は「成金」メンバーでもあり、明るい高座で様々なテクニックを駆使して笑わせる姿に昇太イズムを感じる。

 何も考えずに笑うのが一番だが、将来の名人になる(かもしれない)若手落語家の今とこれからを見守るのも楽しみでもある。

報知新聞社
編集局文化社会部
高柳義人