相模原南市民ホール

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「冥途の飛脚」脚本・演出の東口次登氏よりコメントをいただきました。

2017.05.21

5/7(日)おださがプラザで開催したプレ講座「人形芝居の裏話」のお客様へいただいたコメントです。

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会場へお越しの皆様

初めまして「冥途の飛脚」の脚色・演出の東口です。

この度公益財団法人相模原市民文化財団ご尽力で公演が叶いましたこと嬉しく思っております。本日は本公演に先立って「人形芝居の裏話」ということで、近松の世界に少しでも触れて頂ければと願っております。

まず人形には私生活がありません、もし芝居の始まる前や終わりにコンビニで買い物していたら大事件ですよね。人形劇の梅川・忠兵衛は芝居の時間だけ必死に生き続けるピュアな存在なのです。お客様も先入観なく素直に人形に出会う事になります。その人形たちの感情は実はお客様の心が創りだした感情なのです。ですから想像力が豊かな方ほど楽しめる芸術なのです。合理的な大人より空想する子どもたちの方が楽しめるのはそのせいかもしれません。是非、想像の翼を広げてお楽しみ下さい。

近松の時代、人形は現在の文楽のように三人遣いではなく、一人遣いでした。人形の等身も三等身ぐらいで小さかったようです。ですからスピード感溢れた時代物(合戦物)を得意としていました。その後、世話物(心中物)で繊細な人間描写の必要性が高まり、人形も大きく等身も長く三人遣いになったと推測されます。しかし、クラルテでは世話物であっても基本的に一人遣いです、一人で遣うことは緻密でリアルな動きは出来ません、とてもシンプルな動きになります。それ故、人形遣いは人間全体より人間の本質だけを表現しようと努めます。そしてお客様はシンプルな動きに自らの想像力をプラスして楽しむことになります。

人形劇は色んなジャンル・方法等がありますが、私は人間の本質を表現することに重きをおいて人形劇をつくっています。

「冥途の飛脚」は原作のまま上演されたのは初演くらいだと言われています。時がたち現代では文楽は『けいせい恋飛脚』・歌舞伎は『恋飛脚大和往来』と改作されています。大きく異なるのは「新口村の段」です。原作は雨の中、泥にまみれた世界ですが改作は情緒豊かな雪模様になって美しく設定されています。結末も梅川・忠兵衛はお縄になりますが、改作は実父孫右衛門が見送る中、逃げて行く場面で終わります。

おそらく復活上演する際に、どこか期待を持たせながら美しく終わりたかったようです。今回の公演では原作通りで、雨の中、二人は捕まります。また、原作にはない梅川・忠兵衛の出会いや、相合籠の場面では上演されていない駕籠中のシーンを挿入したりと、今だから出来る演出で当時の芝居を再創造しました。

 

人形劇団クラルテならではの「冥途の飛脚」どうぞ、お楽しみください。

東口次登

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人形芝居「冥途の飛脚」の公演情報⇒コチラ