日本フィルハーモニー交響楽団

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vol . 8 山田 和樹[日本フィル正指揮者]ー第12回定期演奏会に向けてー

前回に引き続き、山田和樹マエストロへのインタビュー後編です。ソリストを務める横坂源さんとの共演、そしてマエストロ流のフランス音楽の聴き方をユーモアを交えて教えて下さいました。

「ムースが軽やかな口当たりであるように、フランス音楽も空気の動きなのです。そして、美しさの中に毒がある。」

――今回ソリストを務める横坂源さんの印象をご教示ください。

まだお会いしたことはありませんが、いろんな方から伺う彼の印象を聞くと、恐らくすぐに意気投合すると思っています。噂によると、仙人のような生活をしているようなのですが(笑)芸術家として一般とは違う感覚を養うためには、普通の暮らしをしていては本当はいけないのではないかと自分もよく思うのですが、音楽家は世の中と距離を置いていた方が良い側面があります。そういった自分の理想を現実化しているような横坂さんとお会いするのは本当に楽しみです。

――マエストロは、共演される方について予めお調べになったりするのでしょうか。

一切ありません。直接会ったその場での第一印象を大事にしています。それに、何しろ初共演にしかない面白さがありますから。初共演で、なおかつ若い方と協奏曲を演奏することは久しぶりなので、今回の共演を今からとても楽しみにしています。

――サン=サーンス《チェロ協奏曲第1番》の聴きどころを伺う前に、お客様の中にはフランス音楽に苦手意識をお持ちの方が少なくないように思います。その理由として、フランス音楽は色彩や和声が際立ち、重厚感や様式を重視するドイツ音楽に比べると物足りなさを感じるのではないかと推測するのですが、マエストロのお考えはいかがでしょうか。

そうですね、それは大福を食べたいと思っている方にムースを差し上げるようなものかもしれません!ですので、美味しいかもしれないけど物足りないような・・・とお感じになるのかもしれません。ムースが軽やかな口当たりであるように、フランス音楽も空気の動きなのです。そして、美しさの中に毒がある。バラのように、棘があるのです。

――サン=サーンス《チェロ協奏曲第1番》の聴きどころをご教示ください。

協奏曲は、共演が多くなるほどお互いの手の内がわかってしまい、予定調和的になってしまうことがあるのですが、オーケストラとソロとでスリリングな掛け合いにできると良いなと思います。今回は、横坂さんと初共演ですし、きっと可能でしょう。
また、僕と日本フィルは、長く東京定期でフランス音楽のプログラムを演奏してきたので、このコンビの面白さもぜひお届けしたいです。

――相模原のお客様へメッセージをお願いします。

第10回登場時の印象が忘れられず、今回ふたたび伺えることが嬉しいです。我々の最高の音楽をお届けできると思いますので、どうぞ会場にお越し下さい。