日本フィルハーモニー交響楽団

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vol . 7 山田 和樹[日本フィル正指揮者]【後編】

――相模原定期には、毎回とてもたくさんのお客様がご来場下さいますが、マエストロのお考えになるオーケストラの楽しみ方をご教示下さい。

お客様が音楽を聴いていて面白いと感じるのは、知っている曲が演奏された時です。それはクラシック音楽に限りませんが、「演奏会に行きたいな」「知っている曲が演奏されるから行ってみよう」と思っていらっしゃって、自分が知っているメロディーが流れると耳が惹きつけられて音楽を楽しむというのが演奏会の第一義的な目的であり、第1段階です。
それが徐々に進んでいくと、「以前聞いたこの作曲家の曲が良かったから、今回は知らない曲だけど、同じ作曲家の曲をまた聴いてみよう」「全く知らない作曲家だけど聴いてみよう」というように、知らない曲だけど楽しめるような段階になります。
また、その段階のスピードというのは、もちろん人によって各々異なりますが、街によっても異なると思います。何となくオーケストラが突然やってきても白けてしまう場所もあるかもしれませんし、逆に盛り上がるかもしれない。恐らくそれを文化と呼ぶのだと思いますが、日本フィルは“市民とともに歩むオーケストラ”と掲げていますので、相模原定期も我々も一緒に成長して、相模原の文化がより発展すると良いですね。
そのために、これからも継続していくことがとても大事です。

――現在、日本フィルの正指揮者として、意欲的なプロジェクトに取り組んでいらっしゃいます。今後、日本フィルとどのような未来を描いているかご教示下さい。

高校2年生の時になりますが、初めて自分のお金でチケットを購入したオーケストラコンサートが、日本フィルの横浜定期でした。その時にとても感動して、以来、日本フィルの演奏会に通うことになりました。
それが巡り巡って自分が指揮台に立ち、かつて自分が得ていた感動を、今度は自分が作り出す場所に来たのだということを実感する度に、正指揮者として日本フィルと歩んでいくことに重責を感じる一方、とても楽しんで取り組んでいます。もちろんオーケストラと指揮者の関係は、一概に簡単ではないのです。しかし、東京定期演奏会は毎年1回やり、その他に自分の企画やさまざまなことを一緒にやっている。その関係性がとても嬉しいですし、正指揮者としての期間としては2022年までですが、これからもずっと今の関係性が続いていって、日本フィルの第1000回定期を自分が指揮することが夢なのです。それを今から吹聴しています。その頃、僕は69歳なのですが(笑)

――相模原定期では、マエストロの登場を待ち焦がれているというお客様の声が多数あります。ついに初登場となる相模原定期のお客様へ向けてメッセージをお願い致します。

楽しいプログラムを日本フィルとともに精一杯演奏しますので、一人でも多くの方に聴いて頂きたいです。そして、その場その場で作っていく一期一会の音楽を、相模原のお客様と一緒に生み出せることを心から願っています。